信心について
弘法大師は「信心とは決定堅固にして退失なからんと欲(ねが)うがための故にこの心を発す。これに十種あり。云々」と申され、信心について十の意義を示されております。
〈信心の十義〉
1、澄浄 (ちょうじょう)…心が澄んで清らかである。
2、決定 (けつじょう)……確信を持つ。
3、歓喜 (かんぎ)…………うれいや悩みが無くなる。
4、無厭 (むえん)…………なまけ心を断つ。
5、随喜 (ずいき)…………他人の勝行と同じ心を起こす。
6、尊重 (そんちょう)……他人の徳を軽視しない。
7、随順 (ずいじゅん)……見聞きする所に逆らわない。
8、讃歎 (さんたん)………他の勝行を称賛する。
9、不壊 (ふえ)……………心が不動である。
10、愛楽 (あいぎょう)……慈悲の心が生まれる。
総じて信心とは、心が清らかになり、自己を見失うことがなく安心と無上なる喜びを得、また、他人に対しては尊重と感謝の思いが生じて、苦しみを抜き楽を与え得る仏教の第一義であります。
人は深層にある執着心や欲により過信・迷信・妄信などが生じ、日頃から誤った行動、偏った道に入りやすいものですが、「信」を訓読すれば「マコト」と読みます。それは、人の言葉の本質は、実は、嘘や偽りがないということから、真実という意味として使われます。
常に私達は正しい言動に留意し、信用・信頼といった「マコト」のつながりを保ち、互い同士が、また全体が信じ合うことが最も肝要なことであり、それが信仰の道であり仏の道なのであります。
合 掌
西 新 井 大 師